最終回:アフィリエイターの末路
(20XX年、ある日)
どうだった?
手紙はいつも読んでたよ。君も苦労したんだって?
回復傾向にあるけど、それもゆっくりだな。
半年で月1万円、1年で月100万円達成。その後もトントン拍子。正直驚いたよ。
なぜだ?
お前も月100万も稼いでいたら無理する必要はなかったはずなのに。
何年もアフィリやってると、変化に対応するのが億劫になってね。
次々現れる君のような新鋭のアフィリエイターにどんどんパイを食われてしまって、ついには月10万を切ってしまった。哀れなものだ。
なんとか挽回したかったが、普通にやって競合アフィリエイターに勝てる自信はなかった。
だから、人がやらない怪しい案件に手を出したわけだ。
安易で、そして浅はかだった。
アフィリエイトの行く末
(ドキュンのオフィス)
どんな商売でも、いい加減な奴の不祥事が業界全部にダメージを与えることがある。
焼き肉店で食中毒が発生すると、焼き肉業界全部の売上が下がってしまうのと同じだ。
アフィリエイターは顔を出さなくていいから、恥も外聞も気にしなくていいし、リアルのビジネスよりタガが外れやすい。
思えばそんなこと初めからわかっていたのに、業界は何の対策もとらなかった。
そしてあの事件が起きた…。
結果、多くの健康被害が発生、数十人の死亡者が出てしまった。
メーカーが罪に問われるのは当たり前だが、被害を大きくしたアフィリエイトという広告手法も非難を受けた。
当然だな。
ああ、反省してるよ。
そして、アフィリエイター初の逮捕者も出してしまった。
俺は無関係だったけど、アフィリエイターというだけで、世間から白い目で見られた。というか、アフィリエイターと名乗れなくなった。
アドセンスのクリック単価も突然激減するし、アフィリエイト広告を貼っつけたサイトの順位は下げられるし、今、アフィリ業界は首の皮一枚だ。
今の収益の主力は大手メディアのステマ記事作成代行だ。
個人のアフィリサイトは死んでるけど、大手メディアのサイトは信頼があるから、まだ広告の価値も高い。意外にちゃんとしたステマ記事を書ける奴ってあまりいないから、元アフィリエイターみたいな奴は重宝されているみたいだ。
業界は健全化に躍起だし、いい方向に進んでいる。
しかし、世間のアフィリに対する風当たりはまだ強い。
アフィリがなくなるとは思わないが、回復にはまだ時間がかかるだろう。
でも、そんなこと聞くって、まだアフィリエイトに未練があるのか?
…いいかな?
でもよ、今の状況じゃ月1万円行くのも大変だぜ。
当面の貯金はあるのか?
バイトしつつ、1年以内にアフィリで生活できるようにしたい。
これからアフィリで生き残っていこうと思うと、これまで以上に信用が大切になる。その分野でNo.1と言ってもらえるサイトを作って行かないと広告も押されなくなる。
それにはもう俺一人ではキツイ。
協力しろよ!
でも、断る。
忘れたの?僕はコミュ症の社会不適合者だ。組織じゃやっていけない。
君の言うとおり、個人アフィリエイターにはキツイ状況だが、それでも一人にこだわって仕事をしたい。
糞みたいだが、それが社会不適合者としての意地だ。
じゃあ、元気でな。餞別これやるよ。

(完)
解説:アフィリエイトの終わり
一般論として、どんな商売にも成長期、最盛期があって衰退期が来る。そして最後は消滅し、人々からも忘れられる。
現在アフィリエイト業界は好景気で、この先もしばらく成長していくと思われる。ありがたいことだが、この状況が永遠に続くわけはない。
時間の進みが早いネット業界のこと、思いのほか衰退するのも早いかもしれない。
現在のところ、アフィリエイトが衰退する確固たる兆候はない。ただし、アフィリ業界を揺るがせかねない危険要因は幾つか考えられる。
●PC・スマホの広告ブロック機能の広まり
最近、サイトの広告(アフィリエイトにかぎらず)が過度になり、煩わしいと思う人が増えている。
そんな鬱陶しい広告をブロックする人が増えてる。やり方は簡単で、グーグルクロームだと、Adblock Plusという拡張機能を使うだけでいい。もちろん無料である。
デフォルトの設定では、通常のASP広告は表示されるが、アドセンス広告、youtubeの広告は排除されている。
認めたくはないが、ユーザーとしては広告がないほうが利便性は高いので、残念ながら今後もこのような広告排除ツールは広まっていくだろう。
ダメージをうけるのがアフィリエイターだけなら世間も騒がないだろうが(アフィカスが死んだと喜ぶ奴もいるだろう)、これは大手メディアを含むウエブサイトで収益を得ているすべての関係者に大きな被害を与える。
ネット広告すべてが成り立たないなら、金をかけてコンテンツをつくる人もいなくなるから、ネットは一気につまらなくなるだろう。
そんなこと素人でも分かるので、広告ブロックに関してはどこかでストップがかかると思うが、現在のところそうした議論は本格的に起きていない。
いずれにせよ、広告ブロックはアフィリ業界に対してはかなりのマイナス材料であることは間違いない。
●一部アフィリエイターの不祥事による業界全体の信用低下
本文中でも述べたが、一部の不届き者のせいで、業界全体の信用が低下することがある。
意外にも、アフィリエイターの不祥事が世間に広く知れ渡る事件はこれまでほとんど起きてない。
コンテンツのパクリとか、詐欺アフィリ塾なんかは業界内のことだが、もっと広く世間一般に被害を与えるようなことをする馬鹿者がいずれ現れるだろう。
また、多くの健康被害者(小麦アレルギー)を出してしまった「茶のしずく石鹸」事件(2010年頃)では販売促進を行ったアフィリエイターが責任問われることはなかったが、今後同様の事件が起きた場合はどうなるかわからない。
どんな形にせよ、アフィリエイトが悪い形で世間に知らしめるられると、アフィリ広告を踏む人は減るだろう。広告ブロック機能を使う人も増えるに違いない。
●グーグルの方針転換
実質的に、日本の検索エンジンシェアの殆どを占めるグーグルは、SEOアフィリエイターにとって神に等しい存在である。
アフィリエイト広告を貼り付けたサイトは検索順位において不利になるという噂もあるが、グーグルは少なくとも公式には否定している。しかし、今後粗悪なアフィリエイトサイトが増えてくると、方針転換するかもしれない。
たとえそうなったとしても、アフィリエイターは苦情も抗議もできない。なぜなら相手は「神」だからだ。
●アドセンスの改悪
特にブロガーよりのアフィリエイターにとって大きな収入源となっているアドセンスだが、グーグルの業績が悪くなればクリック単価も悪くなるかもしれない。同じ米国企業であるAmazonのアソシエイトも一方的に改悪されているし、アドセンスもいつかそうなるかもしれない。
以上のように多くのリスクが考えられるが、個人的にはそれほど悲観的には考えていない。というか、個人でどうこうできるレベルの話じゃないし、考えても仕方ない。そうなったらそうなったで、目の前の危機に立ち向かうだけし、駄目なら他の仕事を探す。アフィリエイトに一生しがみつこうとも思わない。
ただし、アフィリ業界の行く末は気になるし、自分がどんな形で自分がアフィリエイトから足を洗うのか、それもちょっと興味がわく。
だから本文のような与太話を考えてみましたとさ。
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